連載・特集

みすず野2024.1.16

 「日本でもっとも本を愛した俳優」といわれた児玉清さんは、書評とエッセーをライフワークとした。平成22(2010)年には 「悲報のトリプルパンチと新たな希望」という1編を書いた◆「年をとることで感じる不都合は数々あるが、最近とみに感じるのは、ともに人生を歩んできた、というより僕の人生にずっと喜びと楽しみをもたらしてくれている大好きな作家たちもまた確実に老いていくという厳しい現実だ。かつて僕の人生に熱狂をもたらしてくれた作家たちがポツリポツリと消えていく」(『すべては今日から』新潮文庫)◆1年半の間に、大好きだった作家3人が次々に亡くなってしまったと嘆く。ディック・フランシス、ロバート・B・パーカー、マイケル・クライトンで、このほかにも、大好きな作家たちが老いて消えてゆくのだと。エッセーを書いた翌年、児玉さんは旅立った◆この文章が身にしみてわかる年になった。ロバート・B・パーカーはスペンサーシリーズを追いかけて読んだ。作家だけでなく、多くの音楽家、画家、俳優、写真家などの作品がその時々の日々を彩ってくれた。そしてきっとこれからも。