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「第九」松本初演の写真 犬飼康元さんが保管 昭和24年

犬飼さんの父・翠さんが撮影した公演の写真

 戦後間もない昭和24(1949)年6月、松本市でベートーベンの「交響曲第9番」が演奏された際の写真がこのほど、松本市内の民家で見つかった。松本市沢村3で犬飼歯科医院を営む犬飼康元さん(87)の父・翠さんが撮影した白黒の写真で、アルバムに貼って大切に保管されていた。

 市民でつくるアマチュア合唱団がプロオーケストラと共演した国内で初めての事例とされている。当時の地元新聞に公演の様子を伝える写真が掲載されているが、実物の写真はこれまで見つかっていなかった。
 公演は6月19~21日の3日間、セントラル座(大手2、現・福祉施設セントラル・ビオス)で昼夜計6回開催された。指揮者・山田和男(後に一雄に改名)、現NHK交響楽団の日本交響楽団、独唱者はテノールの木下保らが名を連ね、約250人が合唱に参加した。
 犬飼さんは当時、松本市丸ノ内中学校1年生で、学生を集めて開催した昼の公演を聴いた。「演奏に興奮し、子供ながらにものすごいものを聴いたという思いがあった」と振り返る。「もう1回行きたい」と父に頼みこんで、2回公演に行ったという。
 撮影した翠さんは40年ほど前に84歳で亡くなっている。松本市発祥の音楽教育・スズキ・メソードの礎を築いた松本音楽院の事務局に当時勤めていたため、公演の撮影を任されたと推測される。犬飼さんは「写真を見て、父と2人で行った公演のことを思い出すことができた」と懐かしんでいた。