連載・特集

2023.11.23みすず野

 「『人生の残り時間で読んでおきたい本リスト』というものが脳内にある」と、歌人の穂村弘さんは『本の雑誌』12月号の連載コラムで書いている。「リスト化しようと意識したわけではないが、五十歳を過ぎたあたりから自然に発生して、日々内容の書き換えが行われている」そうだ◆「リスト」と聞くと、ピクリと何かが反応するが、こんなのはとってもいい。第一罪がない。誰にも不快な思いをさせない。中身は「大好きな作家の未読作などは当然として、もっと微妙な心理からくるものも、このリストには記されている」んだって◆一つの例として、本格ミステリーの巨匠、エラリー・クイーンの作品ながら、別人の代作であると明らかになっている作品を挙げている。江戸川乱歩作品の代作もある。これには代作のいきさつを乱歩と代作者それぞれが書いた文章も挙げられる◆「人生の残り時間で読んでおきたい本リスト」には何を入れよう。「読まなければならない」ではないからいい。恥ずかしいが、古典の名作なんて読んだ本のほうが少ない。きょうは祝日。じっくり考えてみよう。なんといっても内容の書き換えは自由なんだから。