地域の話題

松本城本丸庭園の活用いかに 保護と観光どう両立 

松本城天守を背景に実施されたディナーイベント。訪日客に飲食が提供された

 松本市の国宝松本城の本丸庭園(有料区域)についてどのような活用が望ましいのか、議論がにわかに浮上している。16日と17日の夜に本丸庭園で開かれた、訪日客を対象としたディナーイベントがきっかけだ。飲食を提供する規模の大きいイベントは初めての試みで、お城を観光資源として活用し、収益の一部を文化財保護に役立てる目的がある。一方、庭園内は一般入場者に飲食は遠慮してもらうよう内規で定めており、市は新たなルールを早急につくる必要性に迫られている。

 ディナーイベントは扉ホールディングス(HD、松本市深志1)が主催し、市が後援した。松本城の保護を目的とした寄付があることや観光庁の補助金を得た事業であることが後援の理由だ。一般の入場者がいない閉園時間に、庭園内の一角に設けられた会場で料理やアルコール類が提供された。火気の使用は制限されるため、調理や暖房は電気が使用された。
 実施の背景には、令和2年に施行された国の文化観光推進法がある。文化財保護には多額の費用がかかるため、文化財を観光面で活用して得た資金を文化財保護に再投資する考えだ。従来は文化財保護のみに重点が置かれていたが、市も国の動向に歩調を合わせる。
 扉HDの齊藤忠政社長は「コロナで観光業は苦しみ、ポストコロナの観光の在り方が問われている。文化財の保護など持続可能な観光を考える上で一石を投じたイベントになったと思う」と手応えを話す。
 一方で、市が令和3年に制定した「松本城公園の活用許可基準」では、長年多くのイベントが開かれた本丸庭園は観覧環境を優先する目的から、特別な場合を除いて今後は極力使用しないと定めている。薪能と砲術演武は防火対策の強化もあり、二の丸御殿跡に会場を移している。
 こうした経緯から、17日の市議会経済文教委員協議会では議員から、市民に対して十分な説明を求める声が上がった。市文化観光部の小口一夫部長は「有料観覧者を妨げないという大前提に基づき、今後の活用方法を検討したい」と話している。