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贄川の重文・深澤家住宅 塩尻市所有へ 現所有者が寄付

市に寄付されることが決まった国指定重要文化財の深澤家住宅

 塩尻市贄川の国指定重要文化財・深澤家住宅を、所有する深澤辰夫さん(90)=千葉県流山市=が市に寄付することが決まった。近世に中山道贄川宿で栄えた商家で、当時の町家建築が分かる貴重な建物だ。年内には所有権が移転される見通しで、管理に当たる市にとっては、今後の保存活用が課題になる。

 深澤家住宅は平成17(2005)年7月、主屋と土蔵の北蔵、南蔵の計3棟が国重文に指定された。いずれも木造2階建て切り妻造りで、主屋(226.8平方メートル)が嘉永7(1854)年、北蔵(66.1平方メートル)が文政4(1821)年、南蔵(59.5平方メートル)が文久2(1862)年に建てられた。
 主屋で特徴的な二出梁を持つ建物は、市内に3軒しか現存しない。平成21年度に重要文化財耐震予備診断が行われ、おおむね健全と評価されている。
 深澤さんに代わり、長年管理してきた隣人が死去したことから、昨年12月に深澤さんの家族が市に寄付を申し出た。市は9月、自動火災報知器の設置や老朽化した電気配線の改修などの文化財管理費87万円を、本年度一般会計に追加した。
 深澤家は屋号を「加納屋」と称し、京都・大阪や北陸・東北地方との遠隔地商売を展開した。辰夫さんの長男で会社員の深澤弘定さん(47)=流山市=は「小学生の頃、夏休みに泊まった思い出がある。柱の太さを見ると歴史を感じる。父も家族も寂しい思いはあるが、市に任せて維持してほしい」と話す。
 規模が大きく状態が良いため、文化財課は「内部公開ができるようにしたい」としている。このほど、土地境界の確認で塩尻を訪れた弘定さんと面会した百瀬敬市長は「先代から守ってきていただいた建物を後世に残して有効活用したい」と述べた。
 市内には国重文の民家7件があり、このうち旧中村家住宅(奈良井)と小松家住宅(片丘)を市が所有・管理し、旧中村家住宅は内部公開している。市は本年度、「市文化財保存活用地域計画」を策定し、文化財の有機的な活用が期待されている。