地域の話題

水冷式貯蔵庫が完成 木祖・湯川酒造店 業界初の環境配慮型 仕込みの井戸水利用

井戸水を通すパイプを内壁一面に張り巡らせた水冷式の低温貯蔵庫。パイプの総延長は2㌔にもなる

 清酒「木曽路」の蔵元・湯川酒造店(木祖村、湯川尚子社長)に、井戸水で空気を冷やす低温貯蔵庫が完成した。酒を仕込む冬季以外は「余っている」仕込み水を冷熱源に活用し、庫内を定温維持する仕組みだ。同社は「自然エネルギーを使う環境配慮型の貯蔵は業界初。日本酒の製造環境に一石を投じるもの」と胸を張る。

 井戸水を使う水冷式は同社独自のアイデア。精米時に生じる糠から、発酵後の副産物である酒かすまで、日本酒には「捨てるものがない」といわれる中で「冷凍や冷蔵など、製造工程には多くのエネルギーを使い〝捨てている〟」現状に疑問を感じ、豊富な水資源に目を付けた。近年は「瓶貯蔵」が保管方法の主流になってきていることを受け、貯蔵タンクを撤去した建屋に断熱・結露対策なども施し、6~9月に施工した。
 約120平方㍍の貯蔵庫の内壁に樹脂製のパイプを張り巡らせ、水を通す。夏場でも室温15~18度を維持できる。品質改良が進む最近の日本酒の保管に最適な温度帯といい、冷蔵が必要な種類を除き、同社が製造する酒の3分の1ほどを貯蔵する予定だ。
 同社は「木祖村の環境をできるだけ補正せずに活かす酒造り」を掲げ、7月には世界最高峰のワイン品評会で日本酒部門の頂点「チャンピオン・サケ」に選ばれた。湯川社長は「この先100年を見据えた持続可能な酒造りへの第一歩。わが蔵ならではの酒造りの価値にもつながる」と話している。
 貯蔵庫は、本年度の仕込み作業を終える来春に本格稼働する。