御嶽・八丁ダルミの規制解除 噴火の記憶、絶景の中に

平成26(2014)年9月の噴火災害以来9年ぶりに御嶽山の王滝頂上(2936メートル)と剣ケ峰(3067メートル)を結ぶ尾根筋「八丁ダルミ」の進入規制が解除された。王滝村側の王滝口、木曽町側の黒沢口の各登山道の頂点となる二つの峰を最短で行き来できる「直登ルート」をたどった。
解除された7月29日の朝は噴火災害当日を思わせるような快晴が広がった。午前10時半、王滝頂上で越原道廣村長が規制ロープを撤去すると、待機していた登山客約170人が1列になって八丁ダルミへ足を踏み入れた。村によると、正午までに約250人が王滝頂上へ登ってきた。村職員が「噴火以来最多じゃないか」と喜色をにじませるような久々のにぎわいだった。
火口域に近い八丁ダルミは見渡す限り砂れきの荒涼とした場所で、身を隠せるような自然物はほぼない。この日は横風が吹いていて、硫黄の臭いは感じなかったが、白っぽい火山灰がうっすらと積もっていた。赤黒い岩壁が間近に見えて、今いる山が火山だということを教えてくれる。王滝頂上を出てすぐの130メートルほどの区間は携帯電話不感地帯で、心なしか足早になる。
登山道自体は一定の高さの階段状になっていて、思ったよりも登りやすく整備され、9年の月日を感じた。剣ケ峰へ続く距離にして約560メートルの直登ルートは片道30分もかからなかった。
道中、定員30人の鋼鉄製シェルターが2カ所あるが、噴火への備えは登山者自身も心掛ける必要がある。噴火すれば弾丸のように飛んでくる石から頭を守るためにもヘルメットは欠かせないが、装着していない人がいた。ランニングの短パン姿や平地で歩くようなポロシャツ姿のかなり軽装の人も目に付いた。
午前11時すぎ、剣ケ峰に達する直前に来た道を振り返ると、眼前の岩肌と眼下に広がる木曽の深い森、そして澄み渡る青空の絶景に癒やされた。が、道脇に目をやると、登山者が滞留しないようにロープが張られ、日本語と英語で「速やかに移動!」などと書かれた看板があった。ここが9年前、噴火でたくさんの人が犠牲になった場所なんだとあらためて実感した。