タクシー乗務員不足深刻 コロナ禍で転職者増 観光シーズンで苦慮

新型コロナウイルスの影響による制限が緩和されて人の動きが活発になる中、タクシー事業者の乗務員の不足が深刻になっている。乗車が激減したコロナ禍中に別の仕事を求めた乗務員が多いほか、生活習慣の変化で特定の時間帯に利用が集中するようになった影響も大きい。需要が増す夏の観光シーズンを控え、対応に頭を悩ませる事業者が多い。
県内最大手のアルピコタクシー(松本市南松本1)は、松本で保有する普通タイプのタクシー約150台のうち、20台が乗務員不足で稼働できないという。そのため、通院する高齢者の乗車が多い平日午前、飲み会から帰る人が利用する夜の時間帯は、乗車まで長い待ち時間が発生し、回復する需要に応えられない状態だ。
コロナ禍にあったこの2、3年、同社は雇用調整助成金を活用するなどして乗務員の雇用維持に努めたが、従来の収入を100%カバーすることは難しく、転職などで乗務員が60人ほど減少した。飲み会から帰る人の乗車はコロナ前、翌日午前過ぎまでさみだれ式に続いたが、現在は午後9時から10時に集中しており、生活習慣の変化が配車をさらに難しくさせている。観光シーズンは季節によって需要がある場所が変わるため、乗務員配置をより柔軟にするなどして乗り切りたいという。
南木曽観光タクシー(南木曽町)は、旅行者の利用が本格的に回復してきており、8月の予約も堅調だ。ハローワークなどを通じて乗務員確保に努めるが「苦戦している。会社の規模が小さいので、『誰かよい人いませんか』と人づてに探している状態」という。
乗務員の高齢化が各社で進む中、平均年齢が63歳というアルピコタクシーは現役世代を確保しようと、乗務員の年間休日の増加に踏み切る。三澤洋一社長は「高齢者の生活の足にもなっているタクシーは公共交通機関の一つ。一人でも多く乗務員を確保し、ニーズに応えていきたい」と話す。 (北原 哲)