地域の話題

自ら選んだ道、自伝につづる 78歳の竹内さんが本出版

『私のことはわたしが決める』を手にする著者の竹内さん

 77歳を目前に松本移住の夢をかなえたがん患者・竹内尚代さん(78)=松本市県1=が自伝的著書『私のことはわたしが決める』(社会評論社)を出版した。事実婚の選択や型にはまらない子育て、25年に及ぶがんの闘病や福島の子供たちの保養支援など人生の節々に考え、決断し、突き進んできた半生を振り返った。「女も男もジェンダーに押し込められることなく自由に生きていけたら」との思いを込めている。

 東京都に生まれ育ち、早稲田大学を卒業後、舞台制作助手や練馬区学童擁護に従事。結婚、離婚、事実婚の選択を経て2男1女を育てながら職労や社会活動にも尽力し、一昨年春に松本市に単身移住した。著書では山あり谷ありの歩みを7章立てでつづっている。
 平成9(1997)年に53歳で卵巣がんの告知を受け、子宮と卵巣を全摘。「目の前に死がある」と受け止めた当時を第4章「がん告知と変わりゆく家族のかたち」で振り返っている。その後も再発や転移、後遺症を繰り返しこれまでに受けた手術は8回に及ぶ。しかし「ジタバタしても仕方ない...『死ぬ』までは人生を楽しもうと思うようになった」。
 この間、新型コロナウイルス禍を背景に長期滞在するようになった松本を気に入り、移住を決断。本書にはあがたの森を散歩し、北アルプスの眺めを楽しみ、松本の文化や歴史に親しむ"第2の人生"の様子もつづった。
 当初は闘病記の執筆を想定したが、書き進めるうちに「ごく普通の一人の女性が、人生をどう生き抜いたかを書きたいと思うようになった」と話す。「命と生活の質は自分で守り、自分で決めたい」と貫いてきた信念や、「皆の愛情に生かされてきた」と家族や友人に抱く感謝も込めた。
 現在も腫瘍を抱える身だと明かし「特に苦悩するがん患者や女性に読んでもらいたい。残りの人生は自然豊かな松本に、がん患者の居場所をつくれれば」と意欲を見せている。
 235ページ、1700円。