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吉江孤雁の生家解体 塩尻・長畝出身の仏文学者 開放感ある庭に様変わり

生家が解体されて庭も整備され、見晴らせるようになった敷地

 塩尻市長畝出身のフランス文学者で、詩人や作家としても活躍した吉江孤雁(本名・喬松)(1880~1940)の生家が解体された。自宅について記された著書『杜の家』の題名どおりに自然豊かな環境の家だったが、築150年がたって老朽化していた。庭は、木々や竹やぶでうっそうとしていたが、樹齢約500年の巨大なケヤキの木など数本を残して伐採し、開放感あふれる庭に様変わりした。

 孤雁のひ孫で、高校時代までこの家で暮らした吉江宗雄さん(65)=長野市=によると、明治初期に建てられた木造2階建ての住宅で、近年まで吉江家が代々生活した。数十年前から誰も住まなくなったが、敷地内の別宅に暮らす別のひ孫が維持管理している。古くなり修繕が必要となったが、費用が高額で断念した。宗雄さんは「仏間もあったので、家を直したかったが壊さざるを得なかった。寂しい感じがする」と残念がる。
 生家はなくなったが、庭が整備されて広々とし、日の光が降り注いで明るくなった。以前は暗くて怖い雰囲気だったという。
 高さ十数メートルで、幹回りが10メートルほどの大きなケヤキは今は芽吹きの頃で、夏は葉が生い茂って涼しい木陰ができる。宗雄さんは「気軽に庭に入って過ごしていただけたら。生家の跡地や庭にある土蔵を何かに利用したいというアイデアがあれば聞かせてほしい」と話している。