横断歩道の前後は空けよう まつもと道路交通考・第4部③ 歩行者優先おろそかに
日本自動車連盟(JAF)の令和6年調査では、長野県は信号機のない横断歩道で歩行者のために一時停止する車の比率が87%に上り、都道府県別で9年連続の1位となった。これはとても誇らしいことだ。ただ、渋滞中の道路で横断歩道上に停止する車や、反対車線が渋滞しているのにスピードを落とさずに横断歩道を通過していく車も少なくない。
松本地域は片側1車線の道路が大半で、信号機のない横断歩道が数多くある。道路の渋滞時には、仮に車が横断歩道の場所で一時停止したとしても、十分なスペースを空けなければ、歩行者が左右の安全確認に苦労する上、反対車線のドライバーも車列の陰から出てくる人に気づきにくく危険だ。
そのため道路交通法は、横断歩道や自転車横断帯の前後5メートル以内の場所での駐車や停車を禁止している(赤信号や危険回避のための場合は除く)。しかし、このルールをしっかり認識できているドライバーは少ないようだ。
松本市清水1の女鳥羽川に架かる桜橋の東詰めに位置する県道と堤防道路(市道)との交差点にも信号機のない横断歩道があり、歩行者や自転車利用者が県道の横断に苦労している。東行きの県道が横断歩道の前後で渋滞することが多く、車列の間から反対車線の様子をうかがって県道を渡る状況が目立つ。信州大学の学生(23)は「いつもこんな感じで怖い」と話していた。
多くのドライバーは横断歩道の手前で一応は停止する。ただ、ルールに沿って5メートル(車1台分)のスペースを横断歩道の前後に確保できているケースは少なく、歩行者の視界が妨げられている。
反対車線だけが渋滞をしている場合の運転にも注意が必要だ。道交法は、横断歩道や自転車横断帯に近づいた時、道路を横断する人や自転車がいないことが明らかな場合以外は、すぐに停止できるように速度を落として運転しなければならないとしている。
松本市鎌田2の鎌田中学校の正門前にある市道の横断歩道でも、渋滞中に横断歩道上で止まってしまう車や、空いている反対車線をスピードを出したまま通過する車があり、教職員の心配事となっている。手塚直樹校長は「登下校の生徒のために安全な運転を心掛けてほしい」と訴えている。