2025.4.6 みすず野
桜が咲き始めた。花の命は短くて、はかない。車を運転しながら聞いていたラジオ番組から、「はかない」を英語で説明するのは難しい、とパーソナリティーが話しているのが聞こえてきた。日本と英語圏の国との根底に流れる文化の違いが理由らしい◆話をかみ砕くと、わび、さびの美意識を持つ日本人に、はかなさは美しさにも結びつけられる。英語圏の国の人にとって、はかないのは、あっけなくむなしいだけで、そこに美しさを見いだすことはないのだという。だから、はかないの微妙なニュアンスを英語で説明するのは難しいのだそうだ◆故事ことわざ辞典に、この世の栄華が長続きすることなく、はかなくてむなしいたとえの「槿花一日の栄」を教わる。朝咲いても夕方にしぼんでしまうムクゲの花のような、たった1日のはかない栄華の意という。槿花を組み込んで「三日天下」の方が2日長いことを表現した江戸時代の川柳も紹介されていた◆はかないの言葉の響きには独特の寂しさや繊細さが漂うように感じる。せわしい現代社会だが、時には足を止めることも大切だ。桜が咲く、はかないひとときをしっかり味わいたい。