喫茶店「あぜ道」 井上本店に感謝の46年

31日に閉店する百貨店・井上本店(松本市深志2)の道を挟んで西側に、喫茶店「あぜ道」(深志1)がある。井上本店が現在地で営業を始める2年前にオープンした。井上の近くで長年店を営んできた上條君守さん(77)と久美子さん(76)夫妻は「井上には本当に助けられてきた。寂しくなる」と話している。
あぜ道は昭和52(1977)年5月、近くにあった久美子さんの実家が区画整理で現在地に移り、4階建てのビルを建設したのに伴い、1階で営業を始めた。当時は、井上もイトーヨーカドー松本店(深志1、当時)も建設工事中。「ニッカーボッカーを着た工事の人たちが次々に来てくれた。座りきれず、立ってコーヒーを飲んでいく人もいて」と君守さんは思い出す。
井上本店が昭和54年4月、現在地にオープンしてからは、井上の買い物袋を下げた人たちが大勢訪れた。中でも思い出すのは、井上の初売りの1月2日の忙しさ。「福袋目当てに元日夜から並び始める人もいたから、2日朝に来たら行列がずらっとできていて。店も休む間もないほど忙しかった」と久美子さんは振り返る。
君守さんは松本県ケ丘高校(松本市)の美術部「白虹会」出身で洋画家としての顔も。井上本店のギャラリー井上で作品展を5回開いた。「店を営業しながらだったけれど、隣だったから『お客さんが来た』という電話があったら、走っていけた」と君守さんは笑う。
水曜定休で午前8時から午後6時半まで営んできたが、現在は体調や年齢を考え、午後4時に閉め、31日も延長はしない。「井上がここからなくなってしまうのは想像がつかない」と久美子さん。君守さんも「この辺りがどうなっていくか分からないけれど、続けていきたい」と話している。