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前照灯オン 暗くなる前に まつもと道路交通考・第3部④薄暮時に目立つ無灯火

 辺りが暗くなる日没前後の薄暮時間帯は、交通事故の発生率が高くなる。県警によると、昨年1年間に薄暮時(日没前後1時間ずつの計2時間)に発生した交通事故は735件で、全体(4970件)の14・8%を占めた。月別では11月が95件、12月は92件と、日暮れが早い時期の発生が多い。

 道交法では、車は日没後はヘッドライト(前照灯)をつけて走ることになっている。松本市の日没時刻が午後5時56分だった今月17日の夕方、市民タイムスは同市島立の県道倭北松本停車場線で、通過車両の点灯状況を目視で調査した。
 その結果、日没前後に当たる午後5時50分からの10分間では99台中32台(33%)がヘッドライトをつけていなかった。完全に日が落ちて暗くなった午後6時からの10分間でも、100台中8台(8%)がヘッドライトなしだった。スモールライト(車幅灯)だけで走る車も見られたが、これも「無灯火運転」で道交法違反となる。

 日没の時間帯になってもヘッドライトをつけない理由は何か。よく聞かれるのが「まだ見えるから」という声で、運転に支障がないのでヘッドライトをつけ忘れたり、意識的に点灯を遅くしたりするケースだ。中には早めの点灯に対して「恥ずかしい」「初心者くさく思われる」など無用な自意識を抱くドライバーもいるようだ。
 ただ、ヘッドライトの役割は運転のための「視界確保」だけでなく、周囲に自分の車の存在を知らせるためにも重要だ。薄暗くなるとヘッドライトなしの車は他の車や歩行者に気付かれにくい。松本地域は西側に北アルプスの山々が連なり、暦の日没時刻より早く太陽が隠れて暗くなるため、なおさら早い点灯を心がける必要がある。
 人間の視覚機能に詳しい東京科学大学の中村芳樹名誉教授は「スモールライトの弱い光では周りの景色に溶け込んで認識されづらい」と、ヘッドライトの点灯の重要性を指摘している。
 令和2年4月以降の新車には、暗くなると自動的にヘッドライトが点灯する機能が備わっている。国の保安基準では周囲の照度が1000ルクス を下回ると点灯するが、これは晴天時の日没1時間前ぐらいの明るさだという。古い車のドライバーも早めのヘッドライト点灯に努め、昼間の運転でもトンネルやアンダーパスの通過時には点灯を忘れないようにしたい。
 県警の渡澤竜一交通安全対策室長は「暗くなったと感じる前のヘッドライト点灯を心がけてほしい」と呼び掛けている。

【メモ】県警は昨年から通年で薄暮時から夜間にかけての事故防止の取り組みを強化している。ドライバーに遠くを照らすハイビームの活用やロービーム時の速度抑制も呼び掛け、毎月指定日に、歩行者にその場で反射材を付けてもらう街頭活動も実施している。