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合図軽視の悪循環を経とう まつもと道路交通考・第3部②「無意識に違反」事例多く

 車が右左折や車線変更をする際に、合図(ウインカー)のタイミングが遅くなったり、出さなかったりする理由はなんだろうか。
 市民タイムスは今月、松本地域の運転免許所有者100人(男女50人ずつ)に、ウインカーの使用実態について対面でアンケートを実施した。
 その結果、右左折や車線変更時に「ルール通りに合図を出している」との回答は87%と高かったが、市民タイムスが松本市内の交差点2カ所で目視調査した結果(6割以上の右折車がルール通りに合図を出さなかった)とは大きな隔たりがある。「他車の合図が遅いと感じることがある」との回答は77%に上り、ドライバー自身の意識とは裏腹に合図を適切に出さない運転が横行している実態がうかがえる。
 交差点で右左折する際に「赤信号で停車中は合図を出さない」は14%だった。理由については、「無意識に」が41%で最多だが、「発進直前まで出す必要がないと思うから」「ウインカーを長く出し続けるのは無駄」「早く出すと周りの車に迷惑のように感じる」「周りの車も遅く出している」といった回答もあった。
 東京都に比べると、松本地域は適切に合図を出さない車が多いことが市民タイムスの調査で浮かび上がっている。こうした「合図軽視」の風潮が「無意識に」ルール違反をしてしまうドライバーを生み出す悪循環につながっているとの指摘もある。
 右左折などの車の合図は、ドライバーの意思を周囲の車や歩行者などに伝える手段で、事故防止のためにも極めて重要だ。右折レーンで停車中にも合図を出し続けることで、後続車からの追突被害を回避することにも役立つ。
 右左折の合図を出し続けることを「無駄」と感じる背景にはウインカーの電球切れを警戒する「もったいない精神」があるとの見方もある。ただ、ウインカーにも使われる近年主流のLED(発光ダイオード)電球の寿命は「旧式のハロゲン電球の20倍以上ある」(自動車照明器具製造大手の小糸製作所)。「ハロゲン電球でも車に10年乗って切れるのは一度あるかないか」(松本市内の民間車検場経営者)といい、ウインカーの点滅時間を気にすることは、あまり意味がない。
 日本自動車ジャーナリスト協会の菰田潔会長は「合図は自分の意思と次の行動を周りに伝えるために大切」と強調し、道交法の順守を求めている。