連載・特集

2025.3.27 みすず野

 この冬が寒かった証しのように庭のフキノトウがまだ顔を出さない。スイセンも花を開くのに時間がかかりそうだ。スマホが重宝なのは過去に写した写真をすぐ見られるところ。花や山菜をいつ撮影したのかわかり、今春との比較ができる◆フキノトウは先週、毎年採りに行く里山を見てみたが、まだしばらくかかりそうだった。ここ数日、暖かい日が続いたから、一気に進んでいるかもしれない。週末が楽しみだ◆フキノトウは「まず汁物の吸い口にして楽しめます」と『厨に暮らす』(宇多喜代子著、NHK出版)にある。「吸い口ということばを耳にすることが少なくなりましたが、木の芽や柚子など、汁物に浮かべて香りを楽しむツマのことです」と説明する。みそ汁に散らすと鼻先に春がいっぱいに広がる感じがするとも◆フキノトウの後にはタラの芽やウド、ワラビ、コシアブラなどが控える。タラの芽などに比べ、ウドは人気がないようで採り残しが多い。作家で国文学者の林望さんは「山独活はどこも捨てるところなく、上から下まで全部食べてしまう」(『いつも食べたい!』ちくま文庫)と。春が届けてくれる贈り物だ。