2024.12.6 みすず野
ユネスコの無形文化遺産に、日本酒や焼酎など日本の「伝統的酒造り」の登録が決まったと報じられた。日本酒は「精白した米と麹と水を混合して、桶に仕込み、徐々に発酵するのを待つ」のだが「人の手になる心づくしが、良酒をつくりあげるという、機械では生れぬ不思議な、神秘的なもの」だと、日本料理研究家の辻嘉一は説いた(『味覚三昧』中公文庫)◆日本酒は飲んで楽しむだけでなく、調味料としても「日本料理に大変役立っている結構なもの」といい、一例として魚を煮つけるときに清酒を用いないと、味に雲泥の差が出ると◆中信をはじめ県内には多くの酒蔵がある。愛酒家が気に入った銘柄を数えると片手では足りないだろう。作家でドイツ文学者の中野孝次さんは「各地の中小酒造がいい酒を造るようになったからたのしみだ。いろんな酒を取り寄せて試みる」と平成4(1992)年、「酒呑みの独り言」に書いた(『私の酒』中公文庫)◆「酒は文化だ。いい酒を造ることこそ文化に寄与するのだと心得、ますます精進してもらいたいものである」とエールを送る。日本酒からは、手作りの息吹が伝わるようでもある。