地域の話題

木工職人目指し奮闘中 米国出身・エランさん 上松技専 初の海外訓練生

椅子づくりに取り組むエランさん。「将来のリタイアを待たず、やりたいことは若いうちにやろう」と来日を決めた

 家具作りや木工の技術を1年課程で習得する県上松技術専門校(上松町小川)で、米国マイアミ出身のアズース・エランさん(37)が、憧れの職人を目指して〝木工漬け〟の日々を送っている。海外からの訓練生は同校初。「自然の中で集中できる木曽の環境が気に入っている。(日本を拠点に)いつか自分の小さな工房を持ちたい」と夢を描いている。

 エランさんは日本への1年間の語学留学の経験があり、現在は米国で不動産投資会社を経営する。中古物件のリフォーム作業を自ら手がける中、かんなやのみといった日本の手工具に関心を寄せるようになった。今年2月、日本人の妻との結婚を機に再来日。「木工をやりたい」というエランさんに上松の技専を見つけ、背中を押してくれたのも妻だった。
 同校の訓練は、手道具を大切にするところが特徴だ。エランさんは「刃を研ぐことが好きになった。フロー(時を忘れるくらい集中して入り込んでいる状態)で落ち着く」とうなずく。平日の大半は深夜まで自主練習に励み、研ぎの時間に充てることが多い。
 入校から半年の間に整理箱やスツール(椅子)などを作った。「研ぎに関してはレベルアップした」と手応えを話す一方で「1年間ってとても短い。もっと勉強したい」と感じている。
 先日、訓練生でつくる「筋トレ部」でチームを組み、地元の「木馬引き大会」に出場した。丸太を載せたそりを引いて速さを競ったが「体への疲労ダメージがすさまじかった。人生最後の(一番の)ハードなイベントだった」と笑う。全国から集まった「家族のような」訓練生と一緒に、日本の暮らしもじっくりと味わっている。