小説家・徳田秋聲の句碑 塩尻の西福寺に 妻と元住職がきょうだい

塩尻市下西条の西福寺(青山裕文住職)は境内に、小説家・徳田秋聲(1871~1943)の句碑を建立した。秋聲の妻・はまと、同寺の住職を務めた23世の英洲はきょうだい(ともに現在の上伊那郡辰野町小野出身)という。寺と秋聲の縁を示す証しとして碑を設置した。13日に除幕式を開く。
金沢市に生まれた徳田秋聲は、「金沢の三文豪」(秋聲、泉鏡花、室生犀星)と称され、自然主義文学の代表的な作家として知られる。短編小説「花咲く頃」には、義弟の英洲が住職となる「晋山式」に夫婦で参列した様子が描写されている。青山住職は「秋聲は以後もたびたび寺を訪れて執筆もしていた」と話す。
秋聲は、師の小説家・尾崎紅葉の影響で俳句を始めたという。昨年には『徳田秋聲俳句集』が発行された。建立した碑には、この『俳句集』にある句「山の井に木の葉沈みて秋の雲」を選んだ。秋聲の直筆を基に句を刻んだ。青山住職は「井戸に木の葉が散って沈んでおり、その水面に秋の雲が映っている、そんな情景でしょう。寺の雰囲気に合う句として選んだ」と説明する。
建立記念として13日午後2時に除幕式を開き、その後に徳田秋聲記念館(金沢市)の藪田由梨学芸員を講師に招いた講演会「明治の文豪 徳田秋聲と西福寺」を開く。無料で申し込みは要らない。