松本ゆかりの俳人・小澤實さんの句集 「蛇笏賞」に選出

松本深志高校、信州大学人文学部で学んだ松本ゆかりの俳人・小澤實さん(67)=東京都=の第4句集『澤』が、俳句界で最も権威ある賞とされる「蛇笏賞」の本年度受賞作に選ばれた。主宰する俳句会「澤」の20周年に合わせ、仲間の顔を思い題名に冠した句集だ。「本当にありがたい」と受賞を喜ぶ。
平成12(2000)年から24年まで12年間の約490句を収めて昨年刊行した。俳句会を立ち上げて軌道に乗せるとともに、雑誌連載のため俳聖・松尾芭蕉の足跡をたどる取材の旅を続けていた時期と重なる。
取材で各地に深く分け入った体験や、句会に参加するため毎月欠かさず戻る信州の暮らし、山岳を題材とした句が数多く載る。「雪嶺まで信号五つすべて青」。安曇野の光景を思って詠んだ句という。蛇笏賞選考委員の俳人・高野ムツオさんは「(小澤)氏の詩想根源はやはり風土にありと再認識させられた」と評価した。
小澤さんは長野市に生まれ、教員だった父親の転勤に伴い県内各地を巡り、中学生以降を松本で育った。俳句と出合ったのは信州大学在学中だ。「(俳句は)東京では無理やり作らないと出てこないのに、こちらに帰ってきて山を見ていたりすると自然にできたりする」とふるさとへの思いを語る。「俳句しかない人間。澤の皆さんが支えてくれたからこそ今も生きていられる」と感謝する姿に、松本の句会のメンバーたちも「とてもうれしいし、光栄」と自分のことのように受賞を喜んでいる。