連載・特集

2024.6.8 みすず野

 鳴き声が名前と一緒だから子供でも覚えやすい。夏鳥のカッコウのさえずりが、そこかしこで聞かれる。松本だと、住宅地でも耳にするが、やはり自然豊かな高原がよく似合う◆托卵する鳥としても知られる。他の鳥の巣に自分の卵を産み、ふ化させ、ひなを育てさせるというのだからずうずうしい。人間社会でいったらネグレクト(育児放棄)や乳児の取り違えといった「事件」だろう◆異名が使われる「閑古鳥が鳴く」は、商売がはやらなくて暇なさまを指す。静かな山里の情景が想起されて寂しい様子から。どうも良いイメージにはほど遠い◆池田町に住んでいた野鳥研究家・田中宏一郎さん(故人)。著書『野鳥に魅せられて』(ほおずき書籍)に「(池田町)会染地区内で確認できた托卵主は、オオヨシキリ・モズ・オナガの3種」と記す。昭和40年ころまではモズ、穂高方面からオナガが来て勢いが強くなると、くら替えをして、その後、オナガが減ると、またモズに変えたとも述べている。「いずれにしても托卵相手がいないことには種の維持は望めない」と結んでおり、田中さんの鳥に向けていた温かいまなざしを思い出す。