2024.6.1 みすず野
定点撮影した写真で、郷土の景色や街の姿の昔と現在を紹介する「トキタビ」。小紙「暮らしにプラス」欄で今春から、毎月第2、4金曜日に掲載している。先日の鶴林堂書店の写真を懐かしくじっと見た読者もかなりいたのではないか◆筆者が中学生や高校生だった時分、ちょっと気合を入れて読みたい本を探すときは、決まって鶴林堂か、松本駅前にあったブックス63だった。もちろん、インターネットのない時代で、本が並ぶ陳列棚を丹念に見て歩いた◆鶴林堂があったビルの上層階に眺望の良い飲食店があった。高校生時代、その店に仲の良い友人と行くのも楽しみだった。トキタビの写真から、瞳に映っていた当時の光景が鮮やかによみがえった。汗をかいたグラスにつがれたアイスコーヒー、たわいのない会話、友人の笑顔...。しばし、まさに時間を旅した◆「人は思い出とともに生きる」。若いころに先輩記者から教わった格言だ。聞いたときには、まだ分からなかったことも年齢を重ねた今、少しだけ深く分かるようになった気がする。思い出になってからのほうが、そのものの大切さも身にしみる。きっと、パルコや井上も。