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越前屋 旅人もてなし400年 中山道・寝覚のそば店 ツアー客 特製御膳に舌鼓

ツアー参加者に提供された「復活そば御膳」。赤いせいろに盛られた白いそばは、十返舎一九も詠んだと伝わる

 江戸時代から続く上松町の老舗そば店・越前屋が今年、創業400年を迎えた。8日、寝覚地区を巡る中山道歩きツアーの参加者6人が、昔の面影を今に伝える旧店舗に立ち寄り、創業以来、著名人を含む大勢の旅人をもてなしてきた店の歴史の一端に触れた。

 越前屋は寛永元(1624)年、景勝地・寝覚の床近くの中山道沿いに創業し、旅館を営みながらそばを提供してきた。近江商人の常宿だったと伝わり、多くの文人墨客も訪れた。十返舎一九は「そば白くやくみは青く入れものは赤いせいろに黄なる黒もじ」と短冊に記したといい、島崎藤村の小説『夜明け前』にも「名物の蕎麦」として登場する。昭和42(1967)年、現在の国道19号沿いの新店舗に移り、平成15(2003)年に旧店舗での旅館業を終えた。
 ツアーは町観光協会が企画した。特別に旧店舗が開放され、越前屋が登場する書画を紹介するパネルが並んだ。女将の横山久美子さん(68)らが参加者に店の歴史を説明した。
 見学後、参加者は新店舗に移動し、昭和期のメニューを元に、マスの甘露煮や山菜のおひたしなど里山の恵みを詰め込んだ「復活そば御膳」に舌鼓を打った。松本市から参加した女性(75)は「また食べたいくらい、とてもおいしかった」と話していた。
 横山さんは「60年以上来ている常連の人が節目を楽しみにしてくださり励みになってきた。旧店舗は昔ながらの建築技術が随所に見られ貴重なので維持していければ」と語った。
 「復活そば御膳」は今年いっぱい提供され、希望者は3日前までに予約する。税込み2800円。問い合わせは越前屋(電話0264・52・2081、木曜定休)へ。