連載・特集

2024.5.26 みすず野

 五月蠅い。煩い。ともに「うるさい」と読む。五月蠅いは当て字だが、最初に使ったのは「夏目漱石説、樋口一葉説がありますが、確かに『煩い』という字より文学的な表現に感じられます」(『まいにち暦生活』ナツメ社)◆五月蠅いから「い」を取り除いた五月蠅は「さばえ」と読む。『広辞苑』に陰暦5月ころの群がり騒ぐハエと教わる。例文に『日本書紀』神代紀の文が引いてあり、奈良時代にはあった言葉だと知る◆いずれも難読だが、パソコンのワープロソフトで入力すると、うるさい、さばえとも変換の候補に出てくる。便利な時代になった。難読漢字というと、もう30年以上前に受けた入社試験に「百日紅」が出た。家に帰ってから調べて「うまい当て字だなあ」と、問題が解けなかったことを脇に置き、感心した記憶がよみがえる。以来、もう1カ月もすると咲くサルスベリの花を見ると、頭の中に漢字が浮かぶ◆あらためて『広辞苑』で、うるさいの意味を見てみると、同じことが何度も繰り返されるので、嫌になり心を閉ざしたく感じる状態とあった。にわか仕込みの知識を並べ、うるさがられないようにしなくちゃ。