地域の話題

染めと織り、ひたむきに 本郷孝文さん松本で個展

展示された着物や反物と作り手の本郷さん

 松本市の染織作家・本郷孝文さん(79)が市内で開く初の個展が27日、同市中央2の高美屋文庫(高美書店ビル中2階)で始まる。糸を引き、草木で染め、織物へと仕上げる手仕事の道を半世紀にわたって追求してきた。作り手の技と生み出された作品の優しさ美しさを着物や反物など約30点を並べて紹介する。

 本郷織物研究所(清水1)で打ち込む本郷さんは工房の3代目。民芸運動の創始者・柳宗悦の甥の柳悦博氏や、民芸運動に関わった父・大二氏の手仕事を肌で感じ、現物に触れる中で染織の世界に魅せられたという。「言葉ではなく、物そのものから多くを学んだ」と若かりし日をふり返る。
 染めは植物染料にこだわり、組み合わせでさまざまな色を作り出す。会場にはザクロやスオウなどの染料のほか、文化継承のため使用にこだわる天蚕の繭も展示した。自動繰糸ではなく手で糸を引き、図案も自らデザインし、手掛ける織物には豊かな風合いと深みがある。
 製糸業が盛んだった松本では戦後間もない時期まで織物組合に数十軒が加盟したというが化学繊維の普及や洋装化、大量生産の到来を背景に衰退した。「風土に根ざしながら手をかけ仕事をする世界を知ってもらえれば」と話している。
 ギャルリ灰月と文化・芸術による学びの場をつくるre△unの主催で5月6日まで。4月29日と5月3日は工房を一般公開する。問い合わせは伏見さん(電話090・7010・9900)へ。

連載・特集

もっと見る