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塩尻市贄川の名物ドライブイン休業へ 「食堂S・S木曽本店」が調理員の高齢化や退職で

トラックドライバー、家族連れなど多くの人に愛されてきた食堂S・S木曽本店

 半世紀以上にわたり塩尻市贄川の国道19号沿いで営業してきたドライブインの名物店「食堂S・S木曽本店」が、29日から休業する。調理を担う従業員の高齢化や退職により、営業が難しくなった。調理の後継者を募り、有望な人材が見つかった場合は営業再開を目指すため、閉店ではなく「休業」とする。未来に望みを託しつつ「一息つく」形だ。

 定休日の月曜を除いて午前6時から午後8時まで営業し、朝食で立ち寄るトラックドライバーも多い。客の求めに応じて増やしてきたメニューは定食や単品の約150種類に上り、品書きを見て迷う人も少なくない。
 3代目社長の佐藤秀喜さん(73)は「全部おいしいので特におすすめはない」と言うが、客から「名物」と言われるのは、創業初期から作っているサバ煮だ。大鍋を使いしょうゆや砂糖で甘めに柔らかく煮て、一晩寝かせて味を染み込ませた逸品。ごはん、みそ汁などがつく「普通定食」が人気だ。
 秀喜さんの父・進さん=故人=が昭和20年代から贄川で営んでいた電器店が前身。今の店舗は現国道の開通を受けて昭和42(1967)年に新築、営業を始めた。高度経済成長期の物流需要とともに多くのトラックドライバーの胃袋を満たした。同52年には広丘店(広丘吉田)が開店した。
 約10年前から経営を手掛ける秀喜さんは、壁をきれいに塗り直したり、電球をLED(発光ダイオード)化したりして明るい雰囲気づくりに取り組んだ。トラックドライバーや家族連れに加え、以前は見られなかった女性の1人客も増えた。
 調理は勤務30~50年以上の70代の3人が担ってきたが、うち1人が3月に退職。残る2人がフル稼働し、ほかの従業員も補助してやりくりしてきたが、負担は限界に。休業を決め、3月末から客への周知を始めた。
 常連客からは連日、「どうしてやめてしまうの」「寂しい」「食べる所がなくなる」などの声が寄せられる。秀喜さんの妻でホールなどを担ってきた秀美さん(71)は「あらためてお客さんに愛されてきたと感じる。本当に感謝しかない」と涙を拭う。
 店の建物は残しておき、調理の後継者が見つかるかどうかによって、営業再開などの方向性を決める。秀喜さんは「望みを捨てたわけではない」とし、「お客さんには本当に申し訳ないが、いったん休むことを許してほしい」と話す。

 調理後継者のイメージは40代くらいで、専業で働く覚悟がある人だ。広丘店で最低1年は修業してもらう。調理経験は不問で、「むしろない方がS・S流を覚えられる」(秀喜さん)という。問い合わせは広丘店(電話0263・86・0338)へ。

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