2024.4.30 みすず野

 季節を歌う漢詩では、春と秋を詠じる作が、夏、冬に比べて圧倒的に多いという。それには理由があって「この二つの季節は、時間の推移による様子の変化が象徴的に認められ、それにともない感情の動きが活発になるからだ」(『NHKカルチャーラジオテキスト漢詩をよむ 漢詩の歳時記【春夏編】』赤井益久著、NHK出版)と説く◆厳しく長い冬が終わり、春の喜びが歌われる。「同時に春が去りゆくのをいかに惜しんだかが、『春帰る』『春去る』『春尽く』などと擬人的にとらえていることから推察される」のだそうだ◆春の訪れが遅いといわれたが、桜の開花とともに一気に季節が進んだ。野の花が一斉に開き、陽気に置いていかれまいと慌てて咲いているようだ。庭のシャクナゲは、毎年5月の連休明けに花を付けたが、もう満開になっている◆春がほとんどなく、あっという間に夏になると感じるのは、近年の傾向ではないだろうか。明日から県の全ての機関で、適正冷房にあわせた軽装勤務の取り組み「サマーエコスタイルキャンペーン」が今年も始まる。この時代にかつての漢詩人がいたら、春の詩を詠めるのだろうか。