連載・特集

2024.4.26 みすず野

 『鉄腕アトム』をはじめとする手塚治虫作品を、教科書のように読んで育った世代だから、代表作のひとつ『ブラック・ジャック』展が開催中とあればもちろん駆けつける。混雑を避けようと平日の午前中、松本市美術館に入館したが、大勢が展示に見入っていた◆『ブラック・ジャック』は、週刊誌の連載が始まってしばらくしてから、1年余り毎週読んでいた。少年漫画の主人公としてはこれまでにいなかった無免許のすご腕医師という設定が、物語に奥行きをもたらして夢中で読んだ覚えがある◆会場の直筆原稿をじっくり見た。プロの原稿の美しさは十分承知しているつもりだったが、実物は本当にきれいだ。ベタ(黒く塗りつぶした部分)は見る位置を変えると微妙な濃淡がわかる。ホワイトの修正はわずかな盛り上がりがあった◆展示には手塚作品おなじみのキャラクターの我らがヒゲオヤジ、お茶の水博士、ヒョウタンツギ、アセチレン・ランプもいた。売店にはブラック・ジャックをデザインしたTシャツがあって、買おうか迷ったが、これだけ腹の出たブラック・ジャックはイメージを損なってしまうに違いないと諦めた。

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