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県防災ヘリ墜落から7年 県消防防災航空隊・望月機長が語る

事故の教訓を胸に、新たな職場での決意を語る望月さん

 平成29(2017)年3月に松本市郊外の鉢伏山で起きた県消防防災ヘリコプター「アルプス」の墜落事故から5日で7年を迎えた。昨年4月に入隊した県消防防災航空隊の機長・望月一浩さん(62)=松本市=は当時、県警ヘリ「やまびこ」の機長として救助活動に当たった。あの日見た光景を胸に、信州の安全を空から守り続ける。

 「今でも上から見ると、最初に(アルプスが)当たった木がわかります」。ヘリで鉢伏山の近くを飛ぶと、望月さんの脳裏にあの日がよみがえる。
 事故当日の午前、県警ヘリでのパトロールを終えた望月さんは、県営松本空港の駐機場で当時のアルプスの機長と言葉を交わしていた。山岳遭難者の救助活動から戻った機長は「風が強くて大変だった」と話していたという。
 午後に入って、消防防災航空隊の整備士が「アルプスと連絡が取れない」と言っているのを耳にした。「どこかに着陸しているのだろう」―。そう思ったものの、やまびこで中央アルプス方面への救助活動に向かう途中、鉢伏山上空まで旋回した。そこで斜面に墜落した機体を見つけた。
 「さっきまで話していた人が...」。急きょアルプスの隊員の救助に活動を切り替え、その日のうちに3人の乗組員を市内の病院に搬送した。だが、3人とも搬送時には心肺停止状態。「今運んでいるのは亡くなった人だ」―。無念さが募り、事故からしばらくは「どうして」と問い続ける日が続いたという。
 事故から6年余りがたった昨年4月、県消防防災航空隊は新たに望月さんを機長候補の操縦士として採用した。還暦を過ぎ、今後を考えていた時に受けたオファーを「不思議な巡り合わせ」に感じた。「絶対に事故を起こさず、犠牲になった隊員の分まで仕事をする」。強い決意を胸に、アルプスの操縦桿を握る。

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