連載・特集

2024.3.5 みすず野

 休日に大きな書店へ行った。本の多さに驚きながら書棚に向き合っていると、どこからかモーターが回転するような音と、何かを話しかけているような声が聞こえてきた。その正体は、床を走行しながら清掃するロボット。腰の高さほどもなかったが、ゆっくりと近づいてきた◆少し離れたところに男性客が一人いるが、知らん顔で本を手にしたまま。ぶつかりそうに見えたが、ロボットは一度止まってから人を避けて動きだした。それを見たので、接近してきても知らん顔をしてやり過ごした◆ファミリーレストランで、初めて配膳ロボットが近づいてきたときは慌てなかった。昼食に誘ってくれた年長者が、慣れた様子で対応されていたので、そういうものかと納得した。一人で向かい合っていたらどうだっただろう◆気がつくと書店には2時間ほどいる。そこへあのロボットが。昔、立ち読みをする客に店の人が、本にはたきをかけるようにして追い出す様子をテレビや映画、漫画で見た覚えがある。ロボットは新手のそれか。そんな思いが一瞬よぎったが、その時代錯誤ぶりに我ながらあきれた。SFではない。なんとかついていかないと。

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