地域の話題

最高の音楽ありがとう 小澤さん死去に市民悲嘆

松本城を背景に開かれたSKF合同演奏会で、松本地域の子供たちの吹奏楽を指揮する小澤さん(平成13年9月2日)

 世界的指揮者・小澤征爾さんの訃報を受け、小澤さんを総監督に松本市で30年以上にわたって開催されてきた国際音楽祭セイジ・オザワ・松本フェスティバル(OMF、前身・SKF)に関わり続けた松本市民ら松本地域の関係者は、一様に言葉を失った。

 小澤さんの指揮で音楽祭のオペラや合唱に出演し、SKO(サイトウ・キネン・オーケストラ)との交友も深めた松本市大手4のそば店主・佐々木文宣さん(61)は「音楽レベルの高さを生で経験させてもらい、人生が変わった。得られた心の充足感、生活の豊かさを思うと感謝してもし切れない」と涙を流した。
 音楽祭の草創期からボランティア協会長を20年務め、小澤さんとの親交も深かった市芸術文化振興財団理事長・青山織人さん(79)は「一地方都市に与えてくれた影響は計り知れない。残念の極み」と肩を落とした。協会長を退任する際「僕も死ぬまで(音楽祭を)やるから君も続けるべきだ」と何度も電話をもらった思い出を振り返り、悲嘆した。
 前副市長でOMF実行委員長も務めた坪田明男さん(82)は、表情にまで曲調がにじみ出ていた小澤さんの指揮や、舞台を降りるとスタッフ一人一人に声を掛けていた姿を回想。「世界一流の指揮者でありながらおごらず、日本人の持つ気遣いや人を包み込むような優しさ、温かさがあった。魅力的な人だった。大好きだった」と別れを悼んだ。
 OMF実行委員長の臥雲義尚市長は「国際音楽祭の開催地として、日本全国の複数都市の中から松本を選んでいただいた。松本の地と松本の市民をこよなく愛し、楽都・松本を発展させていただいた。ご逝去は松本市民にとっても計り知れない喪失で、痛惜の念に堪えない」、阿部守一知事は「長野県に最高水準の音楽芸術を響かせるとともに(SKF、OMFを)世界的な音楽祭に育てていただいた」とそれぞれコメントを発表した。