2025.5.3 みすず野
松本は民芸のまちといわれる。礎を築いたのが、いずれも明治終盤生まれの松本民芸館(松本市里山辺)創設者の丸山太郎、型絵染作家の三代澤本寿、松本民芸家具作りを盛んにした池田三四郎。3人らが民衆的工芸品の美を称賛する民芸運動を唱えた柳宗悦の考えに感銘を受け、傾倒した◆柳は昭和30(1955)年に、松本にあった民芸協会長野県支部の総会に招かれ「異彩を放っている」と同支部をたたえた。理由に、製作者が中心の活動を挙げて「このような動向は民芸運動として最も強力なあり方」と褒めた。中央本部を代表して感謝も述べている(『信州民芸』第11号)◆松本民芸館の居心地の良さはどこからくるのだろう。蔵造りの建物の中に水がめや漆器、ちょこ、つぼ、郷土玩具といった品が並ぶ。素朴なものに囲まれると、人の気持ちは和むのだろうか。デジタル社会の進展に一石投じたくなる◆5月3日は柳の忌日。系譜を踏めば、松本の初夏を彩る一大イベント「クラフトフェアまつもと」も、柳の功績の上に今の成功があるといえるだろう。松本の文化形成に大きく貢献した、泉下の恩人にあらためて感謝したい。