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従軍手記 にじむ郷土愛 千村春雄さん(旧日義村出身) 中国出征時の資料展示 日義の義仲館 戦後80年

現在は失われてしまった故郷の風物に思いをはせる貴重な時代資料も並ぶ企画展

 日中戦争初期の昭和12(1937)年9月から約2年にわたり、陸軍の騎兵として中国大陸に出征した日義村(現木曽町日義)宮ノ越出身の千村春雄さん(1907~2003)が残した記録資料が、日義の義仲館に飾られている。千村さんは後年、地元ゆかりの平安末期の名将・木曽義仲の顕彰活動に大きく関わったことでも知られる。展示された従軍中の手記は、一人の兵士として戦地で自己を見つめつつ、木曽を思う深い郷土愛に満ちた内容となっている。

 戦場でつづられた日記や詩集には、戦闘の描写や捕虜・現地の人々に対する揺れ動く思いが記され、一兵士の胸に去来するさまざまな感情が描写されている。展示では、千村さんが木曽谷の風景や祭り、伝統文化などを、戦地でのふとした情景から連想している箇所も紹介。義仲の伝承に言及した資料からは、戦後の義仲顕彰活動につながる息吹を垣間見ることもできる。
 「ある木曽人が見た戦争~戦後義仲顕彰活動の源流~」と題した企画展で、展示は当面継続する。義仲館の指定管理者・日義特産の海老澤将社長は「宮ノ越の盆が9月1~3日だった記述もある。『昔はそうだったのかな?』と地元史に考えを巡らせても面白い」と勧める。「戦争の記録としての側面のみならず、地域の皆さんが一目置く存在だった先人の記録から、故郷の歴史文化に思いをはせてみてほしい」と話している。
 開館は午前10時~午後5時。入館料は高校生以上300円で町民と中学生以下は無料。今月から火曜日が休館(祝日除く)。