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緩衝帯で熊の出没防止へ あづみの樹楽会が烏川で整備

烏川で伐採作業に励む樹楽会のメンバー

 安曇野市で里山整備に取り組んでいるボランティア団体・あづみの樹楽会が今年、穂高牧と穂高柏原にかかる烏川で、熊が人里に出没するのを防ぐ緩衝帯の整備を始めた。熊が侵入する際は河川を利用することが多いと言われており、荒れた雑木林を伐採して見通しを良くすることで熊の警戒心を高める。人と熊の共存を目指す活動で、洪水対策や景観美化にもつなげる。

 国営アルプスあづみの公園堀金・穂高地区内の渓流連絡橋から山麓線・烏川橋までの両岸約400メートル区間が対象。令和7年度まで3年間かけ、20~40メートル幅の緩衝帯を複数箇所設ける。作業は1~3月の渇水期に行う。
 全国各地で熊の出没と被害が昨年相次いだことを受け、自分たちにできることはないかと独自に企画した。国土交通省や県安曇野建設事務所、市が協力している。樹楽会事務局の別府弘祥さんは「見通しが良くなって熊が警戒し、人と熊が出合うことが減ってくれれば」と期待する。
 樹楽会によると、三郷・堀金地域の西山山麓には野生動物が人里に出没するのを防ぐ電気柵があるが、穂高地域にはなく、烏川周辺が分岐点になっているという。令和2年9月には穂高牧の山麓線に近い場所で、散歩中の女性が熊に頭や肩をかまれてけがを負う事故も発生している。
 県の地域発元気づくり支援金を活用し、切った木の枝をチップ化するチッパーや伐採作業を安全で効率的に行うためのロープウインチの購入を考えている。チェーンソーのガソリン代や作業員の保険代で市の補助金も受けている。切った木は会員がまきとして使う。
 樹楽会には、サポーターを含めて29人が参加している。渡辺晃会長は「樹楽会の活動の新しいステージ。人と熊がお互いに一定の距離を保って共存していけたら」と願う。

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