連載・特集

2024.2.23 みすず野

 昨日の朝の出勤時、街路樹に何かの花が咲いているように車内から見えた。一瞬、桜かと思ったがそんなはずはなく、近づいてくるにしたがって、木々の枝に雨が凍って付いた雨氷だとわかった。それぞれの木々は、桜色のような、わずかに赤みがかった色に見えた◆『雨のことば辞典』(倉嶋厚・原田稔編著、講談社学術文庫)によると雨氷は、凝固点を下回っても凍らない(過冷却)雨滴が降ってきて、氷点下に冷えている木の枝などにふれて凍りついたものをいう。過冷却した雨が降るのは、気温が零度以上の上空でできた雨滴が、零度以下の下層の大気中を落下するからだ。気温の逆転層が重要な役割を果たしているとある◆大規模に発生すると、氷の重みで木が倒れたりする。江戸時代にはしばしば見られたが、近年ではほとんど見られず「こんなところにも、都市の温暖化や地球温暖化の影響が現れているようだ」という。長野県などに多い現象だともある◆街路樹から続く近くの山の木々も、雨氷で同じような色に染まっていた。信号機で止まる度に木々を見た。氷の花が咲いている。間もなく消えてしまうはかないものは美しい。

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