2024.1.19 みすず野
誰もが知っていると思われる歌「雪の降る街を」は、NHKのラジオドラマのリハーサルで、余ってしまう時間を埋めるため作者・内村直也がその場で歌詞を書き、音楽担当の中田喜直がすぐメロディーをつけて挿入した。好評を得て2番、3番の歌詞を作り、ラジオ歌謡として放送された。『歌は季につれ』(三田完著、幻戯書房)で知った◆雪の記憶は子どものころのそり遊びだ。親に作ってもらったそりはプラスチックのそりのようなスピードは出なかったが、暗くなるまで夢中で遊んだ。帰宅して、掘りごたつで体を温め、ぬれた手袋はこたつ布団の間にはさんで乾かした。そのうちに、うとうとしてしまう◆中村草田男の「降る雪や明治は遠くなりにけり」も誰もが知る句。同書によると昭和6(1931)年の作で、明治が終わってから19年を経た冬だ。もっと年月が過ぎたころに詠まれたと思い込んでいた。それに比べると、昭和はずいぶん遠くになったという感慨を抱く◆能登半島地震の被災地にも容赦なく雪が降る。その雪が、避難所暮らしなどを強いられる現地の人たちを、さらに苦しめることがないようにと願うばかりだ。