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塩尻市で出土→松本市立博物館所蔵 平安時代の仏具が里帰り

松本から〝里帰り〟してえんてらすに展示された平安時代の護摩炉

 昭和29(1954)年に旧広丘村(現・塩尻市広丘吉田)で出土し、現在は松本市立博物館が所蔵する平安時代の仏具「鉄製護摩炉」が、約60年の時を経て〝里帰り〟している。広丘地区文化祭(12日)に先駆けた地区公民館などの企画で9日、塩尻市北部交流センター・えんてらすで展示が始まった。

 仏教の儀式で使う護摩木をたく火鉢で、3本の脚が付き、ふたを含む高さが26センチ、幅49.5センチ、重さが15.46キロある。本体のつば部分にはカタバミ紋や六曜紋とみられる装飾が一部残る。平安後期~鎌倉初期に当たる約1000年前の品だ。松本市文化財課の埋蔵文化財担当・草間厚伸さん(40)は「奈良・平安~中世の鉄製品としては非常に大きく、仏具としても非常に大きい。貴重で珍しい」と話す。
 塩尻市誌などによると、国道19号西側の長者原公園南側の畑から出土した。かつて「長谷寺」という寺があった場所と伝わる。その後、松本市立博物館に寄贈され、東京国立博物館が修理と鑑定をした。少なくとも昭和39年には松本市が所蔵していたとみられる。長らく松本城公園内の旧市立博物館の地下展示室で常設展示されていた。
 歴史が好きな公民館副館長で市広丘支所長の西沢和善さん(50)が、地域に存在があまり知られていない護摩炉を住民に紹介したいと、平出博物館と松本市立博物館の協力を得て、えんてらすでの展示を実現させた。「郷土の歴史を知って夢を膨らませてほしい」と語る。
 護摩炉は今後、所定の手続きを経て、松本市から塩尻市へ移管される見通し。
 展示は今月末までを予定する。昭和期に広丘堅石で発掘された平安時代の鏡や陶器も並べている。