地域の話題

喜志子と牧水が詠んだ信州 細野静耀さんが書で表現

喜志子の歌をしたためた新作(右)と、牧水の歌を書いた入選作

 塩尻市広丘原新田の塩尻短歌館に、同市広丘吉田出身の歌人・若山喜志子(1888~1968)と、喜志子の夫で歌人・若山牧水(1885~1928)の短歌をしたためた書作品が、並べて飾られている。短歌館で開催中の企画展「荒波を乗り越えてゆく若山喜志子」に合わせ、喜志子の姉・多美のひ孫である安曇野市穂高の書家・細野静耀さん(59)がしたためた。

 共に信州にちなむ歌を選んだ。喜志子の歌は「信濃路の安曇だひらは山河の眺めさやけくて人ごころゆたか」で、作品は細野さんが今回のために書いた。安曇野は山と川の眺めが素晴らしく清らかで、そこに住む人々も心が温かいと率直に詠んだ。細野さんは喜志子が亡くなった時に4歳で、会った記憶はないという。ただ、生前に喜志子は細野家には訪れたことがあり「その時のことを詠んだ歌かもしれないと想像して書いた」と語る。牧水の歌は「秋かぜの信濃に居りてあを海の鴎をおもふ寂しきかなや」で、美しい秋の信州にいながらふと海のカモメを見たくなるという複雑な思いを表現した。展示しているのはこの歌を記し、平成26(2014)年、「改組新第1回日展」の書の部で初めて入選した思い出の作品だ。
 企画展は喜志子の没後55年に合わせ12月28日まで開かれている。苦難を乗り越え、歌人としての道を進んだ心情と軌跡を紹介している。細野さんは喜志子について「芯が強く自分というものを持った人であり、温かな人でもあったように思う」と話している。午前9時~午後4時半。月曜日、祝日の翌日休館。入館料300円(中学生以下無料)。問い合わせは短歌館(電話0263・53・7171)へ。