有明美術館が再開 松村さん4年ぶり 貴重な絵画・陶磁・・・住民ら後押し

安曇野市穂高有明の松村英さん(93)が、令和元年11月に閉館した「有明美術館」の運営をこのほど再開した。穂高有明に点在する私設美術館の草分け的な存在として40年近い実績があった中、作品を再び公開してほしいという周辺住民、安曇野を繰り返し訪れる観光客らの期待に熱意を呼び戻された。
『原爆の図』で知られる丸木位里・俊夫妻に制作を依頼した『水俣の図』など絵画や、中国・朝鮮王朝時代に生み出された陶磁、版画、彫刻作品など合わせて約70点を常設展示する。高齢などを理由に一度は閉じたが、特色ある書斎風のしつらえを維持し、作品も配置そのままに所蔵、管理。閉館を知らず訪れる鑑賞希望者をその都度、迎え入れていた。松村さんは「住まいもここ。民衆にいつくしまれてきた作品を個人が所有したまま埋没させてはいけないという気持ちが高まった」と話す。
京都府出身。「焼き物に対する目が肥えた土地柄」に加え、実家は美術商を営んだ。旧家から市場へ古美術品が大量に流出した戦後の激動期を知り、間近で優れた品々に接した感動を忘れない。当時より魅了されてやまない頑健で素朴な李朝陶磁、優美な高麗青磁、備前や信楽など国内産地を代表する陶芸家作品を扱い「器は手に取ってこそ良さが分かる」と、希望者があれば展示ケースを開放する。
昭和56(1981)年に開館する以前は、学校などを地方巡回する劇団を京都を拠点に主宰していた松村さん。活動を通じて出会った安曇野市出身の作家・臼井吉見の作品世界や豊かな景観美に導かれ移住した。「安曇野が自分の半生をかけた居場所なのだと再確認している」と意欲を新たにしている。
午前9時~午後5時開館。火・水曜休館。大人700円、小中学生400円。問い合わせは有明美術館(電話0263・83・3701)へ。