連載・特集

2023.10.11 みすず野

 珍しい文物を一堂に集め、催し終了後は常時展示する。明治初めの博覧会は博物館の開設へとつながった。東京国立博物館の嚆矢は明治5(1872)年に当時の文部省が湯島聖堂で開いた博覧会という◆第1回松本博覧会はその翌年にあった。主導した市川量造らの行動力とスピード感覚にあらためて驚く。のんびりしていたら機を逸し、松本城天守は残っていなかったかもしれない。思いの衣鉢を継ぐ。新たな松本市立博物館が開館記念の特別展を「まつもと博覧会」としたのは、150周年の巡り合わせだけでなかった◆松本博覧会は筑摩県時代に計5回―明治9年に長野県となって以降も―開かれた、と今回初めて知った。やがて博覧会の目的は地域の開化から産業振興へと変わっていく。熱量はどうだろう。会場に掲示されたコラムは、ある種あいまいで混沌としていた明治1桁代に比べ〈随分おとなしくなった感じも受ける〉としている◆松本の土台を築いた量造たちのように、共に未来を創っていきましょう―特別展の趣旨はそう読める。立派な「箱」ができた。箱に魂を入れるのはこれからだ。市民のもり立てが欠かせない。

 珍しい文物を一堂に集め、催し終了後は常時展示する。明治初めの博覧会は博物館の開設へとつながった。東京国立博物館の嚆矢は明治5(1872)年に当時の文部省が湯島聖堂で開いた博覧会という◆第1回松本博覧会はその翌年にあった。主導した市川量造らの行動力とスピード感覚にあらためて驚く。のんびりしていたら機を逸し、松本城天守は残っていなかったかもしれない。思いの衣鉢を継ぐ。新たな松本市立博物館が開館記念の特別展を「まつもと博覧会」としたのは、150周年の巡り合わせだけでなかった◆松本博覧会は筑摩県時代に計5回―明治9年に長野県となって以降も―開かれた、と今回初めて知った。やがて博覧会の目的は地域の開化から産業振興へと変わっていく。熱量はどうだろう。会場に掲示されたコラムは、ある種あいまいで混沌としていた明治1桁代に比べ〈随分おとなしくなった感じも受ける〉としている◆松本の土台を築いた量造たちのように、共に未来を創っていきましょう―特別展の趣旨はそう読める。立派な「箱」ができた。箱に魂を入れるのはこれからだ。市民のもり立てが欠かせない。

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