政治・経済

野の香がM&Aで事業規模拡大 中信有数の営農組織に

事業譲渡の契約をを手にする石原社長(右)と、清沢さん、三村さん、柏原さん(左から)

 生坂村でブドウ栽培に取り組む株式会社・野の香(石原徳義社長)が、松本市今井でリンゴやスイートコーン、ネギなどを栽培する個人経営の3生産者から事業譲渡を受けて事業規模を拡大する。作付面積は従来の2・4倍の12ヘクタールとなり、果樹と野菜をメインとする単一の営農組織としては中信で有数の規模となる。野の香は販売力に強みがあり、既存の流通システムにとらわれない農業を目指す。

 生坂村外への進出を目指していた野の香と、家族の高齢化や後継者不在などで今後の営農継続に不安を抱える3生産者を、松本信用金庫と山口会計事務所がM&A(企業などの買収・合併)の形で仲介した。野の香が農地や農業用機械などを取得し、生産者は引き続き同社の役員として経営に参画する。
 リンゴ栽培の清沢善和さん(54)は「一度きりのチャンスだと思い決断した」と、スイカとネギ栽培の三村裕一さん(54)は「それぞれの経験やノウハウを生かしたい」と話す。野菜栽培の柏原年彦さん(54)は「一人の力には限界がある。集まることで大きなプロジェクトに挑戦したい」と意気込む。
 野の香は年間1万1000件の個人向け宅配を受注するほか、大手百貨店などにも販売ルートを持つ。ブドウの農閑期は人材を雇用できず事業拡大を目指す上でのネックとなっていたが、生産品目を増やすことで経営を安定させる。3年以内に年間5億円の売上高を目指す。石原社長は「夢は株式上場。将来に不安を抱える生産者の駆け込み寺のような存在になっていきたい」と意欲を語る。