連載・特集

2023.8.31 みすず野

 解剖学者の養老孟司さんは図書館を―論文を書くとき以外―あまり利用しない。買った本を二宮金次郎のように歩きながら読む。重いと手が疲れるので、必要な所を破いて持ち歩く。公共の物を破いてはいけない(『脳の中の過程』講談社学術文庫)◆当方ほぼ毎日3市いずれかの図書館にいる。書きたいテーマが決まっていれば検索機へ。これといった当てがなく書架の間を歩き回るのは楽しいが、締め切り時間の都合でのんびりもできない。松本の中山や塩尻の楢川など本館以外の蔵書が引っ掛かり、どうしても欲しくて―ちょっと遠いけれど―足を延ばしたこともある◆安曇野・松本と塩尻の休館日がずれているのは―ただし重なる最終月曜日は要注意―ありがたい。先日うっかり松本で貸し出し処理を受けずに持ち帰ってきてしまい、返却に肝を冷やした。システム更新の計画も聞くが、職員の方と手渡しでお礼を言い合うのは気持ちがいい◆周りの背表紙も目で追うようにしている。もしもこの習慣がなかったら、きむらけんさんの『鉛筆部隊と特攻隊』とも出合いの機会を逸していただろう。図書館には本当に、お世話になった。