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御嶽復興 また一歩前進 八丁ダルミ規制 あす解除 噴火9年 安全対策さらに にぎわい回復 地元期待

29日に立ち入り規制が解除される尾根「八丁ダルミ」。写真左奥は山頂剣ケ峰(18日、王滝頂上から)

 死者・行方不明者63人を出した平成26(2014)年の御嶽山噴火災害から今年で9年目となり、災害以降立ち入り規制が続いていた王滝頂上(2936㍍)―剣ケ峰(3067㍍)間の尾根筋「八丁ダルミ」が29日、いよいよ一般開放される。二つの頂上がつながった〝元のお山〟に戻る象徴的な節目だ。復興への歩みがまた一つ進む。御嶽山一帯は国定公園の候補地に昨年度選ばれ、明るい話題はさらに続くが、火山防災と安全登山の啓発はこれからも欠かせない。

 山麓の木曽町と王滝村は、9年かけてシェルター設置や携帯電話不感地帯の解消といったさまざまな安全対策をしてきた。昨年度で施設面の対策はほぼ完了し、原久仁男町長、越原道廣村長はともにこの日を迎えられることに安堵する。原町長は「9年という年月が長かったのか、短かったのか。感慨深い」と話し、越原村長は「お山と共に生きてきた地元としてはうれしい」と述べた。
 ただ、安全対策がすべて整ったわけではない。今後はソフト面の対策を充実させていく必要がある。「安全対策の総合的な運用1年目」と位置付ける越原村長は「避難訓練など両町村の連携を一層図りたい」と話す。原町長は「御嶽山が『火山だ』という認識をあらためて深めてもらう取り組みはしっかりしていかなければ」と引き締めた。
 安全登山の普及啓発に重要な役割を果たすのが、両町村と県が山麓に設置を進めた二つの御嶽山ビジターセンター(VC)だ。リアルタイムで火山情報を発信し、災害の記憶を伝え、自然や歴史、文化といったお山の魅力を展示や体験企画で紹介している。昨夏開館した町立の「さとテラス三岳」(木曽町三岳)と県立の「やまテラス王滝」(王滝村田の原)を運営する木曽おんたけ観光局の古畑浩二事務局長は「登山者が9年前の災害を理解し、火山の情報を入手し、安全に登って楽しんでもらえるようにしたい」と語る。

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 二つの頂上がつながる大きな節目を前に、お山のにぎわいとともに発展してきた地元の期待感は高まっている。今年は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられたことも追い風だ。本格的な夏山シーズンに入り、一般登山客や山岳信仰の信者の姿が増えてきた。
 県によると、御嶽山の来訪者数は18~25年は毎年、木曽側の黒沢口が20万人、王滝側の王滝口が6万人。噴火災害で大幅に落ち込み、近年は回復の兆しがあったものの、令和2年からはコロナ禍でさらに減少の一途をたどった。3年は8月豪雨の影響も重なり、来訪者数は黒沢口が5万人、王滝口が6800人にとどまった。
 王滝口の登山者を受け入れてきたくるみ沢旅館(王滝村)の胡桃澤公司社長は「物価高騰で厳しい中だが、(入り込みは)コロナ前に近い水準に戻る気配はある。登山客が増えることは間違いない」と見る。黒沢口の登山客の多くを運ぶおんたけロープウェイ(木曽町三岳)を運営する木曽カントリーの井口恒雄社長は「二つの頂上がつながれば、登る人が増えて人流が変わる。歓迎したい」と期待する。

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