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大同神社の古文書解読 安曇野・豊科 松本藩から奉納の記載も

西澤さん(右から2人目)が中心となって解読を進めている大同神社の文書

 安曇野市豊科の大同神社の氏子総代が、神社で長年保管されていた古文書などの解読に取り組んでいる。氏子総代が交代する度に古文書などの存在は引き継がれてきたが、近年は実物の確認がされていなかった。解読により、農業用水路の拾ケ堰が江戸時代に開削された際、松本藩が土地の提供などで協力した下鳥羽村社(現・大同神社)に酒などを奉納したことが分かった。

 古文書などの文書類は、境内の宝蔵倉に保管されている。地元の下鳥羽区で活動する「下鳥羽の古文書を読む会」代表で、氏子総代の交代で4月に主任となった西澤洋明さん(73)が解読を進める。
 文書は大まかな種類ごとに分けられており、「御寶物及奉納状」と書かれた木箱からは江戸時代の古文書が5枚見つかった。享保3(1718)年に松本藩が下鳥羽村社に夜灯1対を奉納した記録や、松本藩が境内での禁止行為を定めて貼り出した「禁制」などがある。
 文化14(1817)年の古文書には、前年開削した拾ケ堰の安全を祈って、松本藩から酒とするめが奉納されたことが記録されている。当時の下鳥羽村は拾ケ堰のために約2ヘクタールの田畑を提供し、堰に関係する地図の作製も命じられた。西澤さんは「拾ケ堰の水は下鳥羽には入らないのに、理不尽だと感じていた。謝意の奉納があったことが分かり、長年の謎が解けた」と喜ぶ。
 一方、目録に記録されている文書や宝物は見つからない物も多く、西澤さんは「貴重な資料が失われてしまっている。どこのお宮もそうだと思うが、どうやって管理していくかが課題」と憂う。氏子総代は神社について知ってもらおうと、古文書の内容や神社の歴史をまとめた通信「大同神社お宮あれこれ」を制作。回覧板で地元住民に回している。