犯罪被害者支援へ市町村条例制定訴え 宗賀の川上哲義さん 危険運転死傷事故で長男亡くす

平成26(2014)年5月に中野市で起きた危険運転による死傷事故で、当時25歳の長男を亡くした塩尻市宗賀の川上哲義さん(66)は、県内全77市町村で犯罪被害者等支援条例の制定を求め、県内の被害者遺族の有志と共に活動している。県内での制定は6市町村(中信地区は木祖村のみ)にとどまり、支援体制は整っていない。認定NPO法人長野犯罪被害者支援センター(長野市)の理事でもある川上さんは、事件などの後も遺族の苦しみは長く続くとし「行政の支援が必要」と訴える。
川上さんは31日、塩尻警察署で行った署員向けの講話で条例制定の必要性を訴えた。
消防士だった長男・育也さんが巻き込まれた事故は中野市内の県道で起きた。時速126キロを超えるスピードで逆走してきた乗用車に衝突された。乗用車を運転していたのは当時19歳の少年で、危険ドラッグを使っていた。
川上さんは「事故後は、雲の上のようにふわふわしていて3、4日間記憶がない」と振り返り、食事や買い物など日常生活のサポートや、心のケアが必要と述べた。事故後も裁判が長引いたことで、苦しみが続いたと指摘。弁護士費用など経済的な負担が大きかったことも説明した。
被害者や遺族を支援する県条例は令和4年に施行されたが、カバーし切れない部分があるという。支援が必要な内容は多岐にわたるが、市町村に条例があれば「支援する際の根拠となる」と強調する。
「被害者になりたくてなる人はいない。遺族は一人で解決できず、行政の支援がなければ途方にくれる。条例を制定し、安心・安全を担保してほしい」と述べた。
被害者や遺族と接する機会が多い署員たちに「被害者・遺族が犯罪被害者支援室や、支援センターに直接話ができる状況をつくってほしい」と求めた。