連載・特集

2023.6.16 みすず野

 児童手当って、もらったっけ。もらってないわよ。3歳くらいまであったような...老境に差し掛かり、物忘れが増えてきた夫婦の会話である。人は人にしてやったことを決して忘れないが、してもらったことは大抵忘れてしまう◆「子育て支援に力を入れます」―と選挙に出る人たちが判で押したように言い始めて10年以上たつ。それまで取り立てて支援とは聞かなかったし、支援された実感もない。病院代も高校の授業料も払った。そのうえ親孝行な子供2人の進学先はともに県外の私学だった◆これが「次元の異なる」少子化対策の中身か―と釈然としない。子育てを社会全体で支えることは将来、支えてもらう身に返ってくる。有効な施策ならば老骨にむち打てる間は負担だってしよう。とは思うものの―子育てを終え、これから医療や介護費がのしかかる世代には、置き去りにされたような不安が募る◆われわれよりも上の世代は、もっと行政の支援が無かった。それでも子育てをしっかりしてきた。安心して子供を産み育てられる社会へ―その時代に学ぶことはないだろうか。お金は必要だけれど、お金だけではないと思うのだが。

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