連載・特集

2023.6.14 みすず野

 県歌「信濃の国」の作詞者を浅井洌と言えても、作曲は?と問われ(スマホを見ないで)答えられる人の割合はどれほどだろう。当方は過去の紙面と関連書籍を繰らなければならなかった◆県師範学校音楽教師の北村季晴(1872~1931)が曲を付け、明治33(1900)年に発表された。七五調の歌詞を明るく軽快な旋律に乗せ、全6番中4番の調べをしとやかに変化させた編成の妙が挙がる。実は前任教師の依田弁之助が先に作っていたが、単調で雅楽調の曲はあまり歌われなかったという◆県歌制定から50周年の節目を迎えた5年前、小紙の田子元気記者がコラム月見やぐらで「(季晴が)日本最初の歌劇を作曲した人物であることも忘れてはならない」と力を込めている。曲の良しあしというのではなく、まさに時代が詞と曲を出合わせたと言えそうだ。季晴は在勤1年4カ月で信州を離れる。長年愛される歌を生む奇跡の接点だった◆あす15日が江戸前期の古典学者・北村季吟の旧暦の忌日とネットで見なかったら、本稿を作る機会は無かった。季晴は季吟の子孫とか。6月17日は季晴の命日である。元気よく歌ってみるか。

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