連載・特集

2023.5.9 みすず野

 通り掛かりの生け垣や公共の植え込みで、白や紅のツツジの花が咲いている。花好きの人に笑われそう。サツキとの違いが分からない。コブシとハクモクレンも見分けられないこと―とっくに読者はお見通し◆安曇野支社に居た時は満願寺へツツジの絵柄を求めて「もう咲いたか、まだ早い」と足しげく通ったものだ。本堂の大屋根を入れ、見に来た人に足を止めてもらい...と構図を練った。燃え立つ景色に腕前が追い付かず、どこをどう撮っても似たような写真にしかならなかったが◆泉鏡花は〈路の右左、躑躅の花の紅なるが、見渡す方、見返る方、いまを盛なりき〉と描いた。〈冷水をしたたか浴びせ躑躅活け〉は杉田久女。躑躅は春の季語。立夏を過ぎていると叱られるだろうか。サツキなら夏という。気を取り直して〈満開のさつき水面に照るごとし〉久女◆サツキは葉先がややとがっている。ツツジの葉は楕円形―いくらスマホが便利でも、やはり歳時記と草花図鑑は手元に備えておきたい。たしか昨年も同じことを思ったような...いつもの角を曲がったら足元に紫色の花が―さてハナショウブかアヤメか。難問は次から次へと。