連載・特集

2023.4.19みすず野

 いわゆる「魏志倭人伝」を巡る書籍は矢が尽きることがない。江戸時代から続く論争は邪馬台国の所在地を畿内だ北部九州だ、いや別の場所だとかんかんがくがく。全てには目を通せなくても書店で見ると手が伸びてしまう◆14年前に奈良の纒向遺跡で大型建物跡が見つかった時は、これで九州説は息の根を止められたと思った。ところがどっこい。ワニ・プラス社の新刊は帯に「熊本にあった!」と(くまモンのイラストも)うたう。目からうろこの解釈もあり、読後すっかり「熊本」派になった◆かつて耳目を集めた木製ガードレールが老朽化し、鋼製への交換が進む―と記事で読み、はやり廃りは世の常との感を深くした。今もてはやされていても10年たてば「そんな時代もあった」となるかもしれない。さらに10年後、再び脚光を浴びることがないとは断言できない◆昭和かよ、と笑われる世代だ。古い考えを改めながら、時代がどう移ろうと「変わらないもの」も大切にしたい。将来「当時は難しいと思ったけれど、今じゃ当たり前」と言えるような変化を一つ一つ増やさなければと思う。卑弥呼の都は謎のままのほうが面白いが。