連載・特集

2023.4.11みすず野

 俳聖芭蕉が琵琶湖のほとり、大津市の義仲寺に眠ることは知られている。芥川龍之介は旧制中学の時、学友会誌に「義仲論」を寄せた。なぜ木曽義仲だったのだろう◆松本や麻績、朝日にも伝承があり、木曽は旗揚げの地とうたう。何のためらいもなく記事に「郷土の英雄」と書いてきたが、あらためて問われると...地元だから...後世の軍記物にゆがめられた人物像を正したい気持ちなら分かるけれど、芭蕉も芥川も地元の人ではない。未知の魅力がきっとあるのに違いない◆墓を同じ場所にと願った芭蕉の思慕は相当なものだ。芥川は〈失敗の一生〉としながら〈男らしき生涯也〉と傍点まで打つ。悲運の将なら―いわゆる判官びいきの―九郎義経でもいいではないか。木曽町日義の人たちに聞いてみたい。かの地の祭りではこう歌う。義仲公と〈おらが在所は一つでござる〉...巴御前も山吹姫も〈隣の姉さじゃないか〉◆5月21日に小社が催す「木曽路ウオーク」で義仲の里を歩く。宮ノ越駅から義仲館や旗挙八幡宮、巴渕などをたどり、原野駅まで6キロコース―もしも木曽を初めて歩く参加者がおられたら、わが庭へ客人を迎える思い。

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